旧約聖書には天からの硫黄と火によって滅ぼされたとされる町がある。ソドムとゴモラだ。この都市滅亡が実際の話である可能性が高くなってきた。それを紹介したのがNHKの番組「フロンティア 旧約聖書 滅亡の街の真実」だ。
https://www.nhk.jp/p/frontiers/ts/PM34JL2L14/episode/te/7KLZZVGMRM/
この番組では考古学的な証拠からヨルダンにあるダルエムハマル(Tall al-Hammam)遺跡が隕石によって滅びた可能性が高く、もしかしたらソドムあるいはゴモラの町なのかもしれないと考えられていることを紹介している。
せっかくなので旧約聖書を紹介すると次のようになる。旧約聖書の中でも「創世記」19章からの引用である。
「ロトがゾアルに着いた時、日は地の上にのぼった。主は硫黄と火とを主の所すなわち天からソドムとゴモラの上に降らせて、これらの町と、すべての低地と、その町々のすべての住民と、その地にはえている物を、ことごとく滅ぼされた。しかしロトの妻はうしろを顧みたので塩の柱になった。アブラハムは朝早く起き、さきに主の前に立った所に行って、ソドムとゴモラの方、および低地の全面をながめると、その地の煙が、かまどの煙のように立ちのぼっていた。」
改めて見てみると確かにリアリティがある。誰かが見たものを書き記したのかもしれないと思ってしまっても仕方がない。
でも、そうした光景が隕石によってもたらされたものであることをどうして信じられようか。たしかにダルエルハマル遺跡には、通常の自然現象では説明がつかないような大惨事が起こった形跡がある。陶器が溶け、瓦礫は舞い上がり、その破片がぐしゃぐしゃに1〜2メートルにわたり積み上がっていたそうだ。これは地震や火事、戦争では説明がつかないと言う。
それが隕石によるものかもしれないから検証してみよう。そんな機運が高まったのは、2013年にロシアに隕石が落ちたことである。チェリャビンスク州というカザフスタン国境に近いエリアで、火球が爆発した。死者さえ出なかったものの、衝撃波でガラスが割れたり、屋根が飛んだりし、1400名もの負傷者がでたという。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/2013年チェリャビンスク州の隕石落下
こうした現象は過去にも起きていることがわかった。1908年にシベリア上空で隕石が爆発したと言う「ツングースカ大爆発」という事件である。爆心地から半径約30 – 50キロメートルの森林が燃え、1000km離れた家屋のガラスが割れたという記録もあるそうだ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ツングースカ大爆発
こうしたことから隕石で町が滅びたとしてもおかしくはないと考えられるようになり、まともに研究されるようになったという。
この番組では研究者たちが証拠を積み重ねることで隕石によって町が滅びた可能性が高いことを証明していく。
その中でも面白かったのが、エンジニアのおっさん、フィル・シルビアさんが趣味が講じて、ダルエムハマム遺跡発掘に関わるようになったということだ。この人物は、ずっと隕石について調べていて、引退後、研究者に会いに行った。そこから、おそらく大学院に入り、博士号を取得している。自分の引退後に好きなことをやって歴史的な発見に関わったのだ。
この番組、隕石によって滅ぼされた町という話が興味深い一方、研究者の人間ドラマも面白い。いろんな形で人がつながっていき、それが歴史的な発見に繋がっている。おそらくそのほかの科学の発見にもいろんな人間ドラマが背後にはあるのだろう。そんなことを考えさせる内容のドキュメンタリーであった。